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胃X線検査(バリウム造影)も捨てたものではない

胃内視鏡検査と胃X線検査は胃がんの診断と治療に重要なものです。それぞれ長所と短所がありますが、昨今の風潮としては観察力が優れる点では内視鏡がおすすめという流れがあります。私は、胃X線検査と胃内視鏡検査の両方をしておりますが、胃X線検査の位置づけが大きく変わったことを強く感じます。以前は胃の病変の検出、診断だったものが、特にピロリ菌感染慢性胃炎にたいする除菌療法が保険適応になってから、胃粘膜で“ヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)感染による変化”の有無をチェックすることが重要な役割として加わっています。胃X線検査でピロリ感染が疑われる場合、胃内視鏡を行うと慢性胃炎、ピロリ菌陽性と同時に一定割合で早期がんも見つかります。意外にも、胃X線検査で胃炎、胃内視鏡検査でピロリ菌陽性となった場合でも、胃内視鏡検査での炎症が胃X線検査で分かるほどは明らかでないことがあります。つまり、胃X線検査の方がピロリ感染胃粘膜を診断する点では胃内視鏡より鋭敏である可能性があります。とくに粘膜の所見の少ないピロリ菌感染初期に強いようです。ピロリ菌抗体検査が健診でのピロリ菌のスクリーニング検査として使われることがありますが、この検査にも一定割合の偽陰性があります。胃X線検査では、ピロリ抗体検査で偽陰性の場合でもきちんとピロリ陽性を示唆する所見が得られます。胃内視鏡検査の優れた点は論を待ちませんが、バリウム造影も捨てたものではないので、うまく共存できれば良いのではと思います。

http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/igan.html
  「国立研究開発法人国立がん研究センター」