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COVID-19飛沫感染対策としての換気の評価のためにCO2濃度をチェックすることの意義

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しては、飛沫感染対策、接触感染対策ともに重要です。日本でのCOVID-19はクルーズ船での集団感染が始まりだったので、当初は表面に付着したウイルスが手を介して鼻、口、目に感染する接触感染対策に重きが置かれていた印象があります。その後国内外の事例の積み重ねの結果として、飛沫感染対策も大変重要であることが分かってきました。
  不織布マスク、フェイスシールドは感染者から放出ウイルスを含む飛沫の直撃を防ぐには有効です。しかし、ある空間にウイルスを含む飛沫が充満していれば、不織布マスク、フェイスシールドをつけていても、その空間にいるだけでウイルスを吸い込んでしまいます。ですから、飛沫感染対策としては、その空間に存在するウイルスを含む飛沫を減らすことが鍵で、換気が極めて重要です。最近店舗など人の集まる場所で、CO2濃度が1000ppmを超えないようにモニターする事例をよく見ます。その有効性について考えます。
  労働安全衛生法(事務所衛生基準規則)、ビル管理法によれば一般のオフィスにおいて、労働者1名あたりの空間(気積)は、10立方メートル(㎥)(10000リットル)以上なければならず、CO2濃度は1000ppm以下でなければならないとの基準があります。
  例えば、居酒屋でややスペースをとってお客さんが入っている状況を想定します。一人あたり2平方メートルのスペースがあるとします。天井が2.5メートルであると一人あたりの気積5㎥(5000リットル)となります。人の呼気中のCO2濃度は40000ppm(4%)で1分間で多くて10リットルの呼気を排出します。大気中のCO2濃度は400ppmです。仮に全く換気がないとすると一分間あたりCO2濃度が80ppmずつ上昇して、7.5分で1000ppmに達します。換気する場合CO2濃度を1000ppmに維持するとするには1分あたり500リットルの換気が必要になります。1時間あたり30㎥(30000リットル)ですので、1時間に6回空気が入れ替わることになります。CO2濃度を800ppmに維持するとするには1分あたり920リットル、1時間あたり55.2㎥(55200リットル)が必要になります。1人あたりの面積が4平方メートル、天井が2.5メートルの条件(気積が10㎥)でCO2を1000ppmに維持している状態では、1時間に3回空気を入れ替えています。気積が大きくなればなるほど、同じC02濃度でも換気量は少なくなります(表)。
  このことから、ある程度人の密度が高い環境においては、CO2濃度をモニターすることで換気がしっかりされていることを確認できます。逆に人の密度が低い環境では、CO2濃度が低くても換気を十分しているとは限らないことに注意が必要です。CO2濃度の換気の評価指標として用いるには、1人あたりの気積を考える必要があります。

当院では、COVID-19飛沫感染対策として、通常換気によりクリニック全体の空気を1時間あたり3-5回入れ換えております。さらに、窓の開放、空気清浄機の使用、オゾン発生器の使用を行っております。

表 目標CO2濃度に保つために必要な1時間あたりの換気回数

一人あたりの気積
2.5㎥ 5㎥ 10㎥ 20㎥ 50㎥ 100㎥
目標CO2濃度 1000ppm 12.00 6.00 3.00 1.50 0.60 0.30
900ppm 14.88 7.44 3.72 1.86 0.744 0.372
800ppm 22.08 11.04 5.52 2.76 1.38 0.69

(人の呼気CO2濃度が40000ppm、呼気量1分間あたり10リットル、大気CO2濃度400ppmとして)