最近外来で、急性E型肝炎の患者さんを相次いで診察することがありました。幸い経過は良好で一過性の感染でした。感染源としては疑われたのは、加熱不十分の豚レバーでした。E型肝炎は、E型肝炎ウイルス(HEV)というRNAウイルスによる経口感染症です。HEVには、毎年推定で2,000万人が感染し、推定330万人がE型肝炎を発症し、44000人がE型肝炎関連で死亡しています(2015年)*1。日本ではE型肝炎が初めて確認されたのは2003年で、加熱不十分な豚レバー、猪肉、鹿肉を食べることが原因として報告されています。2012年6月12日から食品衛生法に基づいて、豚の肉や内臓を生食用として販売・提供することが禁止されています。
肝臓は門脈を通じて、多数の腸内細菌が存在する大腸と直結する臓器です。牛レバーにも腸管出血性大腸菌(O157、O111など)やカンピロバクター陽性の例が確認されています。腸管出血性大腸菌感染症は、小児や老人では致命的になることがあり、2011年に7名、2012年に8名、2016年に10名、2017年に1名が死亡しています*2。カンピロバクター感染症は、難病のギラン・バレー症候群の原因となることがあります。2012年6月12日から食品衛生法に基づき、牛レバーの生食用としての販売・提供が禁止されています。 同様に鶏レバーにもカンピロバクターがいることが報告され、生食によるカンピロバクター食中毒の報告があります。本来鶏の筋肉内には菌は存在しないはずですが、鶏肉解体の過程で菌が付着して、鶏わさ、鶏さしによってもカンピロバクター食中毒が発生した事例が報告されています。
以上の通り、加熱不十分なレバーは豚、牛、鶏とも感染の危険があります。生食可能なのは、生食用食肉の基準を満たした牛肉、馬肉だけです。
*1 世界保健機関(WHO)、E型肝炎に係るファクトシート2021年7月27日
*2 厚労省HP 腸管出血性大腸菌Q&A2021年12月17日