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マスクの呼吸機能に対する影響について

  新型コロナ感染症対策のためにマスクをつけることは、当たり前になっています。しかし、ほとんど全ての人が長期間に渡り長時間つけることは、歴史的にも初めてのことです。マスクには明らかなメリットがありますが、これだけ付き合いが長くなると、デメリットについても、慎重に検討することが必要と思います。
  健康な成人は、1回あたり500ml(一回換気量)、1分間に12-20回の呼吸をします。鼻腔入った空気が、気管、気管支と進んでいき、肺胞にて酸素O2と二酸化炭素CO2のガス交換が行われます。肺胞の直前の終末細気管支までは、ガス交換の機能を持ってないので、一回換気量の3分の1ほど150-180mlはガス交換に寄与せず、死腔量(dead space volume)と言われます。
  呼吸生理に関して、マスク装着の影響は2つあります。1)死腔量の増加。装着により死腔が鼻腔の外に拡大することです。これにより死腔量が増加して呼吸の効率が悪化します。2)呼吸抵抗の増加。マスクの存在価値は、吸気(空気)と呼気をフィルターすることですから、マスク無しで呼吸する場合と比較して、呼吸抵抗が増加して、呼吸により多くのエネルギーを必要とすることになります。実際、健常者でN95マスクを用いた報告では、マスクなしと比較してマスク装着では、死腔量が80%増加し、吸気抵抗が126%、吸気抵抗が122%増加しました。その結果として換気量が37%低下したとされています*1
  大気中のO2濃度は約21%、CO2濃度は約400ppm (0.04%)です。呼気中のO2濃度は約16%、CO2濃度は約40000ppm (4%)です。健常者でマスク装着時のマスク内のO2濃度、CO2濃度を測定した報告があります。大気中のO2濃度が20.9%、CO2濃度が464ppmであったのに対して、安静時のマスク内のO2濃度が18.3%、CO2濃度が14162ppm、運動後のマスク内のO2濃度が17.8%、CO2濃度が17000ppmでした*2
  このようなマスクがきちんと装着されている状況では、呼吸だけでも相当の労力を要することがわかります。マスクを装着し長時間集中力を維持しながら業務を行うのは、本当に大変です。不織布マスクでもN95ほどではないですが、きちんと装着している状態では、呼吸とともにマスクが外側内側に動き、呼吸抵抗が増加していることを示します。また、覆われていることによる死腔量の増加もあります。不織布マスクは長時間使用しますので、ボーとしたときの無意識のときの呼吸に影響を与えないのか、そもそも本当の意味の無意識の呼吸が可能なのかが気になるところです。
  マスクが感染予防に有効なのは明らかではありますが、健常者の安静時のマスク装着でも影響が否定できないので、運動時や疾患を抱える方のマスクの装着には、必要性について慎重な検討が必要です。

*1 Objective assessment of increase in breathing resistance of N95 respirators on human subjects. Lee HP, et al, Ann Occup Hyg 2011; 55:917-921

*2 COVID-19 and mask in sports. Pifarré F, et al. Apunts Sports Med 2020; 55: 143–145