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内視鏡機器の驚くべき進歩について

  内視鏡の不断の進歩には目を見張るものがあります。柔らかい管の先端にフィルム式のカメラが付いていた胃カメラの時代は、検査中は内腔の観察は出来ずに、終了後フィルムを現像し写真を観察する形態でした。その後、柔らかい管の中に柔軟性のグラスファイバーを束にしていれ、対物側にレンズを反対側にアイピースとフィルムカメラを装着したファイバースコープが登場しました。1990年代になると、超小型撮像素子(CCD)をスコープ先端に配置したビデオスコープが主流となり、現在の内視鏡の基本のシステムが出来ています。今でも一般にファイバースコープという言葉が使われていますが、本来のグラスファイバーのファイバーでなく、内視鏡自体がファイバーのように細くなり自由自在に曲がるためなのかも知れません。その後も内視鏡には様々な改良がなされて進歩しています。
  当院では富士フィルム㈱の内視鏡を使用していて、Linked Color Imaging (LCI)という光に関する技術が使用可能です*1。“LCIは短波長狭帯域光と色調拡張技術を組み合わせることによってわずかな色の差を強調し、観察をサポートする”とのことですが、粘膜の違いが大変良く分かります。内視鏡検査では、粘膜の視覚情報から病変の有無、その病変の性質について判断します。LCIを使用すると、“粘膜の上に病変名が書いてある”ような印象を受けるほど粘膜の状態が分かりやすくなります。個人的にはLCIの出現が、内視鏡の進歩のなかで、今後大きな一歩だったと評価されるものと思います。近々、AI技術を用いた胃がん、食道がんの診断支援ソフトが使用可能になるとのことです*2。LCIによる画像解析と今までの莫大な内視鏡画像データに基づいた“賢い”AI技術が合わさるため、大変期待できると思います。
  また、ピロリ菌感染による胃炎の初期の段階では、バリウム造影で捉えられる粘膜の変化(アレア不整)が内視鏡の通常の光(白色光)では分かりにくいことがあります。LCIを使うとその変化が良く分かりますので、内視鏡での観察の段階でピロリ菌の有無の当たりがつくようになりました。逆に、古いとされているバリウム造影が、粘膜異常のスクリーニングにおいてはいまだに価値があることを再認識させられました。

*1 https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1413259883.pdf
*2 https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/8607