診察室での血圧が高くても、自宅での血圧は正常な場合があります。そのような状態を白衣高血圧症と呼びます。白衣高血圧の“白衣”にとらわれないよう注意が必要です。医療機関を出れば血圧は正常化するという意味ではなく、医療機関外での緊張する(交感神経が刺激される)状況においても血圧が上昇する可能性を示唆します。医療機関においては、血圧測定がルーティンですので、緊張による血圧の上昇が見つかるのに過ぎません。実際に米国の文献では、白衣高血圧症(White-Coat Hypertension)は“職場での血圧が上昇しているが、職場外での血圧(随時血圧、家庭血圧)は正常である状態”とされています*。
白衣高血圧症は、普段の血圧も高くなる持続性高血圧症に移行しやすいとされています。耐糖能異常と糖尿病との関係に似ています。耐糖能異常では食後を中心として血糖が上昇しますが、糖尿病になると食後のみならず空腹時の血糖も上昇します。耐糖能異常の段階できちんと対策をとると糖尿病への進行は抑えられます。白衣高血圧症自体でも、持続高血圧ほどではないものの正常高血圧と比較して、代謝異常や心血管イベントや心血管死、全死亡数が高くなります*。白衣高血圧性に対して、普段の血圧が正常だから問題なしと片付けず、きちんと向き合うのが重要です。
* White-Coat Hypertension: Pathophysiological and Clinical Aspects: Excellence Award for Hypertension Research 2020. Mancia J, et al. Hypertension. 2021;78:1677–1688