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骨格筋は血中グルコースの重要な供給源である

  三大栄養素(炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質)のうち、普通は糖質の摂取が最も多いです。日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言(2013年)によると“三大栄養素の推奨摂取比率は、一般的には、炭水化物50~60%エネルギー(150g/日以上)、たんぱく質20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質とする。”とされています。代表的な糖質はグルコース(ブドウ糖)であり、多くは穀物のデンプンに由来します。唾液、膵液に多く含まれるアミラーゼによって二糖類のマルトースになり、小腸上皮の酵素によりグルコースに分解され吸収されます。1日の摂取カロリーを2,000 kcal、糖質50%、たんぱく質20%、脂質30%とすると、糖質は1,000kcal(250g)摂取されます。体内ではグリコーゲン(動物でんぷん)の形で、肝臓に約100g、筋肉に約300gの合計400gが存在しています。筋肉内のグリコーゲンは筋肉内のみで消費されるので、血中へ供給されるストックとしては肝臓の100g(400kcal)だけになります。摂取カロリーが消費カロリーを上回るときには、三大栄養素は全て脂質(中性脂肪)の形でストックされます。
  体重60kg体脂肪率20%の人では、脂肪量は12kgです。脂肪1kgが9,000kcalですので、脂肪としてのストックは108,000 kcalになります。脂質の摂取量600kcalと比較して極めて大きいことが分かります。一方、糖質のストックは400kcalでフロー(1,000kcal) に対して極めて少ないことがわかります(表)。摂取する糖質が減少すると、容易に低血糖になるはずです。朝食抜きだと、前日の夕食から昼食までかなり長い絶食になります。脂肪は豊富なストックがありますが、グルコースの大きな供給源にはなることができません*1
  低血糖を起こさないのは、骨格筋がグルコースの供給源になっているからです。骨格筋はアミノ酸がつながった様々なたんぱく質で構成されています。アミノ酸はアミノ基とカルボキシル基と側鎖からなりますが、側鎖の構造によって、代謝されてグルコースになれる糖原性アミノ酸(Glucogenic amino acid)とグルコースになれないケト原性アミノ酸(Ketogenic amino acid)に分類されます。セリン、スレオニン、グリシン、アラニン、システイン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、プロリンメチオニンは糖原性アミノ酸です。チロシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニンは糖原性アミノ酸かつケト原性アミノ酸です。ロイシンとリシンは純粋なケト原性アミノ酸です。骨格筋の代表的なたんぱく質ミオシンとアクチンのアミノ酸配列をみると、それぞれ約73%と約77%がグルコースの供給源となり得ます。
  バランスの取れた食事であれば、肝臓のグリコーゲンと筋肉からのアミノ酸をバッファーとして血糖は維持されます。しかし、極端なカロリー制限の時には、血糖のグルコースを維持するために筋肉がグルコースの供給源として使われ筋肉量が低下します。また、カロリーが足りていても極端な糖質制限のときにも、血中グルコースの維持のために筋肉が分解されます。糖原性アミノ酸については、グルコースになり消費されますが、ケト原性アミノ酸は脂肪として蓄積されるという問題もあります。糖質50-55%の場合、長期のフォローで死亡率が低く低糖質でも高糖質でも死亡率が上昇し、特に低糖質で死亡率の上昇幅が大きいというデータが発表されています*2。食事療法の目的は、筋肉量を維持しながら過剰な脂肪を減らすことです。極端なカロリー制限や極端な糖質制限によって体重減少に成功しても、実は筋肉量が減っていて脂肪が増えているだけの可能性があります。

摂取カロリー2,000kcal 体重60kg 体脂肪率20%
糖質 たんぱく質 脂質
三大栄養素摂取割合(%) 50 20 30
摂取カロリー(kcal) 1,000 400 600
ストック(kcal) 400 108,000

*1 中性脂肪はグリセロールに脂肪酸が3つ結合した構造をとる。中性脂肪が代謝される時には、グリセロールと脂肪酸に分解される。グリセロールと構成する炭素数が奇数個の奇数脂肪酸の一部の部分のみがグルコースへの変換が可能。体内の脂肪酸は炭素数が偶数であるものが殆どで、奇数のものは僅か。
*2 Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis Lancet Public Health 2018 Sep;3(9):e419-e428.